1.2
デジタルマルチメータの高確度化と、その限界
1).確度とは
最近のデジタルマルチメータ(DMM)の高確度化は素晴らしい進展を示しています。
デジタルマルチメータは従来のアナログテスタと比べ、確かに高精度、高確度です。しかしながら、デジタルだから高確度であるわけではありません。測定値がデジタル表示することで、だれでも同じ値を読み取り、アナログメータのように針の位置から値を読み取る際の「読み取り誤差」もありません。この意味でデジタルは高精度ですが、DMMの高い精度は内蔵のアナログ回路部の精度など他の様々な要素により裏付けられています。
確度は真の値に対しDMMの表示(測定値)が取り得る範囲を意味します。
真の値から差を示す"誤差"範囲になります。したがって±○○%という表現になります。
DMMのメーカは測定器の“確度の仕様”を
“読み値”×xx(ppm)+“計測レンジ”×yy(ppm) のように二つの値の合成として表現しています。
例えば、某社のDMMの仕様、
10Ωレンジの計測で(読み値)15ppm+(レンジ)5ppm (1年)と説明しています。
(分解能:10μΩ)
1Ωを計測すると、65μΩ(=15μΩ+50μΩ) (1年)の確度になります。
これが、当該DMMの確度なのです。
2).抵抗ブリッジの計測不確かさ
MI-6010Dの仕様を使って説明します。
MIは不確かさで、上記の“確度”に対応する内容を説明しています。
不確かさは、元々測定できない真の値が測定値からどの程度のばらつきの範囲内にあるかを示す確率で表現しています。以下は2σ(95%)での値です。
説明を分かりやすくするため、確度の決める要因を参照標準の抵抗値の確度、抵抗ブリッジの比率計測確度とすると、
条件は10Ωの標準抵抗(9331)と1Ωの被校正抵抗を比較する。標準抵抗は、不確かさ1ppmで校正し、その後、1年以内の経過であるとする。
10Ωは1年間の安定性2.5ppm、6010Dの比率精度は0.04ppm以下です。
各項目の二乗加算のルートを求めると、2.7ppm。
1Ωを計測すると、2.7μΩになります。これが、前提条件に従って6010Dを使用した不確かさになります。
DMMに比べると一桁、計測確度が増したことを意味します。
以上